第78回展の記録

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第78回展に期するもの

 新制作協会は1936年、東京美術学校に学んだ猪熊、伊勢、中西、内田(巌)、小磯、佐藤、三田、鈴木とベルリンに学んだ脇田の9人の画家によって時の官展の混乱に向っ立つことに端を発し結成、創立された美術団体です。当時20代末から30半ばの俊秀達でした。1939年彫刻部が、1949年には建築部(1969年スペースデザイン部となる)が創設され3部の協調と綜合の精神のもとに結集、今日に至っております。協会のマークにも象徴される通り、前進と向上を希求するものです。幸い戦前、戦後の美術界を通じその若さと清新の気にあふれる純粋さは好評をもって迎えられて参りました。

 ここで発足時の短い協会規約から大切な綱目とみられる文言を、さらに要約して記しておくこととします。 「純粋芸術の責任ある行為に於いて新芸術の確立を期す」 「独自の芸術活動の自覚に於いて、我々の背馳すると認めたる一切の美術展覧会に関与せず」 「我々は常に新しき時代の芸術家を与望し、公募美術団体展覧会を最も厳格なる芸術的態度に於いて開催し、以って我々の芸術行動の確立を期す」  何と格調の高い、若者の気概に満ちた宣言でしょう。改めて畏怖の念さえ禁じられません。また、長きにわたりこの国の美術界をリードしてきた本会の多くの先輩方と同志の果たして来られた営為と努力に対し、尊敬と感謝の思いを新たにします。

 新しさとはどのようなものでしょうか。各自の資質に応じるものであることは確かでしょう。しかし、つねに洗練され、品位にあふれ、時代に即応した表現を心がけることでしょう。作品がどこか明るく、新しいと感じさせる、観者に感動を与える表現としておきます。かつ、独自で内容の伴った技術を備えていることです。この二つの側面が、新制作の伝統を築いて来たアイデンティティとして評価されるべきものでしょう。  応募をお考えの方も、以上のような主旨をご理解の上、果敢にチャレンジして頂きたく思います。  展示の制約などであるいは厳しい審査になることもあるかもしれません。しかし出品を続け、長い年月にわたり、自他を内面から見つめる機会を得ることは芸術家として次のステップを図ることになるものと確信しております。そして本展は、すぐれて今日的で輝きに満ちた美術教育の現場となるものでありましょう。

第78回展 委員長  福田 徳樹

 

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