第76回展の記録

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生きづく創立精神
 今年は新制作展も76回展をむかえ、国立新美術館にもすっかり定着した感がある。
昭和11年以来かくも長き年月にわたり展覧会を開催し、存続できたのも新制作協会規約によるところ大である。

規約の五項目からなる文面には創立への気概に満ち溢れ、新制作の精神的支柱となっている。その新制作を最も愛し、常に先頭に立って鼓舞し多大な貢献をされた先達である創立会員も既に鬼籍に入られたが創立の精神は脈々と生きづき、今に引き継がれている。又、建築部は昭和24年、日本を代表する7名の建築家によって発足したが昭和44年現在のスペースデザイン(SD)に名称が改められた。

 昭和20年はさすがに展覧会を開催できなかった。しかし、戦後の混乱した社会状況においても制作活動は盛んであった。戦時下では制作も容易ではなかったが終戦を機に若き美術家達は自由を求め、その夢と情熱が一気に噴出したのであった。

 欧米からの幾筋もの運動ともいえる流れが日本に紹介され伝えられてきたのも昭和20年以降である。
アンフォルメル・ポップアート・コンセプチュアルアート(概念芸術)・ハイパーリアリズム等々、一方マリノ・マリーニ、ジャコモ・マンズーに代表されるイタリア具象彫刻、イギリスではヘンリー・ムーア、バーバラ・ヘップワースを筆頭とする彫刻家達の製作活動は日本の美術界に新風を吹きこみ、刺激し、大きな影響を与えた。が、やがて何を求め如何に表現すべきかを自らに真摯に問い、探求することによってその影響下から脱していった。

 近年とみに多岐にわたる芸術観、多様な表現がみられる中で時流におもねることなく内奥から湧出する強い欲求が制作の原動力とって作品が創出される。それこそが真の芸術の誕生であろう。

 スペースデザインでは屋内外に設置されるオブジェ、住空間におけるインテリアデザインでは壁掛け、床置き等広領域の作品を対象とし空間との関係を密にした展示方法には工夫が凝らされている。

 たとえ主義主張、価値観が異なるといえども美術に対する純粋な想いと取り組み、新鮮な感性と発想は技術の巧拙はともかく粗けずりであってもそれは若者の持つ魅力であり、特権である。そして次代の新制作を担うべき人材であることを切望し―我々は常に新しき時代の芸術家の結合を与望し―とした協会規約に基づいている。

第76回展 委員長  細谷 泰茲

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