「SD通信」Vol.3(2020.10.10)

カテゴリー: 協会新着SD通信各部のTOPICS オン 2020年11月2日

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新制作協会/スペースデザイン部情報メールマガジン「SD通信」Vol.3(2020.10.10)

皆さんこんにちは。SD通信編集部です。
いよいよ秋到来、比較的過ごしやすい季節となりました。
今年の新制作展は延期となりましたが、各部門ではWEBを利用するなどそれぞれが工夫しながら様々な企画を進めました。
記事の最後にご紹介させていただいておりますので是非一度ご覧ください。

さて、スペースデザイン部では今回も所属会員によるコラム『 私を創ってくれた3つの作品 』をお届けいたします。
記憶に残る作品、ターニングポイントとなる作品などを毎回作家ごとに3点選んでいただき色々コメントしていただいています。

制作への想い、こだわり、当時の思い出、作品の発想のきっかけや技法や素材のことなど、会員同士でもあまり知らなかったような貴重なコメントが毎回登場いたします。素材や技法、展示の方法が多岐にわたるスペースデザイン作品の魅力を更に感じていただけると思います。

3回目は伊藤順さんの登場です。どうぞご覧ください。


「私を創ってくれた3つの作品」
スペースデザイン部会員 伊藤 順

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作品1「seeds #4 ricochet」
2005年 第69回新制作展出品 (H180 W150 D70)

一つ目の作品は、新制作展に一般で応募していた頃のものです。
当時、薄い木材をしならせたり反らせたりして曲線的で有機的なフォルムを表現したいと思っていた私にとって、この形はある意味終着点のようなものでした。
しならせた薄い板を繋いで、できるだけ大きな空間で完結させることを目指していたからです。
米ヒバを薄く製材したものを麻紐で縛って繋ぎ合わせ、気球のような形にしてあります。
「気球のような」と言いましたが、何か種のようなものが跳ねているとか弾けているようなイメージで考えたので、作品名に仏語で「跳ねる」を意味する「リコシェ」を入れています。
下の尖った部分は杉の角材から鉋で削り出して十六角錐にしてあり、気球部分と真鍮の棒で繋いであります。
台は曲線に切断した鉄を溶接して作りました。
この作品を完成させ自分では満足したものの、会員の方からの評価はあまり高くはなく、自分にとって転機となったと言えます。
それは、「こんなものを作りたい」という思いが強く、それを全て一つの作品に入れ込みすぎた結果、表現が過多になってしまったからです。
「言いたいことが多すぎて何を言っているのかわからない」という講評を頂き、眼から鱗が落ちたような気がしました。

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作品2「ロトス」
2013年 第77回新制作展出品 (H180 W120 D120)

二つ目の作品は、会員に推挙された年に出品したものです。
現在も続けている「ロトスシリーズの」一作目になったものです。
檜の角棒を束ねて円錐状にしたものを三つ作り、中心部分を一枚の板で固定してある作品です。
水面から顔を出している蓮の実をイメージしたもので、三本の円錐状のところは、蓮の種が抜けた実の部分を、板の部分は水面をイメージしています。
上部の丸いところには穴を開けて蓮状(ハチノス状)にしています。
この頃は、台や支えなどの余分な部分をできるだけ削ぎ落としてシンプルにしたいということで、作品自体で自立させたいと思っていました。
そこで一番安定しやすい三本の柱にして、それぞれを水面の部分で繋ぎ合わせています。
水面の部分にはルーターを使って溝を彫り、水紋を表現しました。

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作品3「ロトス #5」
2017年 第81回新制作展出品 (H50 W250 D60)

三つ目の作品は「ロトスシリーズ」の5作目です。
ずっと木をしならせたり反らせたりしてきて、ついに「曲げる」ことを始めた作品です。
アイロンを使っての曲げ木を作品に取り入れました。
角材を水で濡らして、濡れた布で包んでアルミホイルを巻いたものを、アイロンで加熱して曲げます。
1mmにつき1分加熱するので、1cm厚の木材なら10分加熱し、型にはめて冷ますときれいな曲面を作ることができます。
同じように曲げた木材を、交互に並べてボルトで固定し、溶接した鉄の上に やじろべえ のようにのせてあります。
ふわふわと動く感じが、軽快で気持ちの良いものになりました。
木を曲げることで、作品の可能性が大きく広がった作品でした。

●伊藤 順さん プロフィール
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伊藤 順(いとう じゅん)
1970 山形県生まれ
1998 新制作展 初出品(’99年を除き以降毎年入選)
2000 上越教育大学大学院修了
2001 グループ展「木のかたち」展
2001 世界工芸コンペティション金沢2001
2007 グループ展「木のかたち」展
2009 新制作展 新作家賞受賞(同’11年受賞)
2013 新制作協会 会員推挙


SD通信Vol.3『 私を創ってくれた3つの作品 』
伊藤順 編は如何だったでしょうか。
木素材の加工方法や制作のプロセスが丁寧に解説され、伊藤さんの作品の魅力が更に伝わったのではないでしょうか。

◎伊藤順さんの情報はこちらにも掲載されています。
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次回Vol.4は 11/1頃 配信予定。伊藤哲郎さんの『 私を創ってくれた3つの作品 』をお届けします。
(新制作協会/スペースデザイン部情報メールマガジン「SD通信」)

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